北風と太陽

土日は暑くて、外に出る必要のある用事を全て先送りにした。

 

涼しい部屋でごろごろしてたら、エアコンが1時間に1回切れるようになった。

調べると、フィルターの汚れが原因であることが多いらしい。

案の定フィルターが汚れていたのでお風呂場で掃除した。

ちょうど、身体を動かしたいなと思っていたのでいいタイミングだった。

 

埃で灰色になったフィルターにシャワーを当てると、たくさんの埃がシャワーの水と一緒に勢いよく排水溝のネットに絡まっていく。

洗い終わった透明でピカピカのフィルターを見て、先送りにした用事の分は取り返したなと満足した。

 

綺麗になったフィルターを取り付けると、これまでより明らかに威勢のいい涼しい風が吹き出してきた。

これでエアコン問題は解決だ。

エアコンが消える心配のない涼しい部屋での読書はたまらんねぇと、ごろごろを再開したら、一時間後にエアコンがぱったりと消えた。

 

この時期の修理、混んでそうだなあ。

 

 

土曜日の夜に「明日の朝はフレンチトーストを食べよう」という話になり、夜のうちにフレンチトーストの仕込みをした。

 

恋人が仕込みをしてくれるというので、ありがとう〜なんて思いながら呑気にフレンチトースト作りを眺めていた。

恋人は、卵のパックを冷蔵庫から取り出して、1個、2個、3個...と卵を割ってボウルに入れていく。4個目の卵に手をつけたところで、ちょっと待って!と反射的に口を出してしまった。

 

私は、ぷるんぷるんの半プリンのようなフレンチトーストが好きだ。

たっぷりの牛乳に1個の卵、これまたたっぷりの砂糖を入れた多めの原液に、食パンを入れてヒタヒタにする。もちろん原液は全て目分量だ。

この作り方で、ぷるんぷるんのフレンチトーストを作ることができる。

これに関しては、子供の頃から蓄積された思い出とともに、舌と脳に組み込まれた好みなので、どうしても変更ができない。

 

このことを恋人に伝えると、俺はどうしてもこれが作りたいと、ホテルオークラのフレンチトーストレシピが表示されたスマホを見せてきた。

そこには材料に卵6個と書かれていた。

たまごろっこ?!

卵6個なんて入れたら固くなって、出来損ないの甘い卵焼きみたいのができるに決まってる。

また、砂糖31グラムとも書かれていた。

さとうじゅういちぐらむ?!

1グラムの意味が分からないので、レシピそのものの信頼性もあやしい。

 

ということで、ホテルオークラのレシピには反対したのだが、どうしても譲れないテーマというものがあって、今回のフレンチトーストはお互いそれだった。

結局、半分ずつの量でお互い好みのフレンチトーストを作って食べ比べることになった。

 

翌朝、それぞれが仕込んだフレンチトーストを作って二人で食べた。

もちろんどちらも美味しかった。

フレンチトースト自体がどうやっても美味しいので、どの流派も美味しい。

 

そっちのフレンチトーストの方が美味しいかも。と言われたので、いや、そっちも美味しいよと返した。

北風と太陽である。