卵焼きの端っこ

100均で買った小さいフライパンで無理やり卵焼きを作ってみた。

形は不恰好だったけど、まあ100均の小さなフライパンで作ったにしては上手いだろうと思った。私の生活には「〜にしてはいいだろう」が多すぎだなと思いながら、まあいいかと思った。

思ってばかりだけど今日は家に1人なので声に出すわけにもいかない。

焼けた卵焼きの端っこを切って味見したら塩加減がちょうどよく美味しかった。いつもは味を濃ゆくしすぎてしまう。

ひとりご飯だけど卵焼きの端っこを切って、なんとなく綺麗にお皿に盛り付けるといい気持ちになった。

前に実家に帰った時に、お母さんが太巻きを作っていて(なんで太巻きなんか作っていたのか分からない、実家に住んでいた時に太巻きなんて出てきたことなかったのに)、それを私はキッチンのカウンターから眺めながら「そういえば、村上春樹の本に『それにしてもどうして女の人はあんなに太巻きの端っこが好きなんですかね』って書いてあったな」と言うと、お母さんは、「あら、お母さんも太巻きの端っこ大好きよ」と言って、出来上がった太巻きの端っこを口に入れてもぐもぐ食べた。

太巻きを飲み込み終わった後に、「〇〇、村上春樹の本なんて読むの?お母さん村上春樹は好きじゃない」と、母親に結構嫌そうな顔をされた。「村上春樹の本はおもしろいんだよ」と一応言い返すと、「お母さんは嫌いよ〜」と更に言い返された。その間に太巻きは綺麗に大皿に盛り付けられていった。

なんで端っこのものって惹かれるんですかね。