2時間半の料理

待ち時間の長い料理が好きだ。

正確に言うと、料理の合間の若干何かにゆるく縛られてる時間が好きだ。


今日は朝から胃腸の調子が非常に良くなかったので、ふらふら家の中を歩いたり、電源のついていないコタツに潜り込んだりしていた。朝食兼昼食としてグリーンダカラとゼリーを食べ、若干回復したところでぼちぼち仕事をした。


大分体調も回復し、ご飯ものを食べたい気持ちが出てきたので、早めの夜ご飯としてお粥を作ろうと思いついた。

お粥のような柔らかくてどろっとしている優しい食事がとても好きだ。そしてなにより、待ち時間が長い。出来上がったものも、出来上がる工程も好きな食べ物はなかなかないんじゃない〜と思いながら米をとぐ。


米をといだ後は浸水する。ここで早速1時間30分の待ち時間(浸水時間)が訪れる。

料理の定番と言えそうだが、キッチンに椅子を持っていき、読んでる途中の本を開く。窓を開けているのでやわらかい風が顔に当たって気持ちいい。一度目を閉じ深く息を吸う。


風が心地いいキッチンにて読んでる本は池澤夏樹の小説だ。3ヶ月ほど前に、小説「スティルライフ」と、エッセイ「異国の客」読んで以来、もっと!もっと読みたい!の気持ちがむくむく育ってきており、少しずつ同著者の作品を読み込んでいる。村上春樹は、「今回の作品はとても残念でした、次回は頑張ってください」という感想をもらうと、悔しいがとても嬉しい。読者との信頼関係が築けているということだから。と、いうようなことを言っていたが(うる覚え)、読者側としても信頼する作者と偶然出会えるというのはとても嬉しいことだなと思う。


ここで、浸水してる米からパチパチと結構な大きさの音が聞こえてきた。氷河の氷を水に入れた音を想起させるパチパチ音だ。調べてみると、米が水を吸って膨張してヒビが入る音らしい。氷河の氷の音の出方とはまるきり違った。同記事内に「乾燥しすぎる保存環境にあるので保存場所を見直した方がいいかもしれません」「古くなった米の可能性があります」という文言があって少し怖くなったが、あまり切羽詰まった言い方ではなかったと解釈し、気にしないことにした。


1時間半経ったので、次の工程に進む。

少量の油を熱した鍋に入れて、米が透明になるまで炒める。ケトルで沸かした熱湯をたっぷり入れ、混ぜ続ける。ふつふつと煮立ってきたら、弱火にして蓋をせずに放置する。混ぜるのはたまにでいい。ここでまた25分の待ち時間(煮込み時間)が訪れる。

椅子に座り直し、コポコポと動く鍋の中を見つめる。早めに作り始めたおかげで、窓からの日差しは暖かく風もまだやわらかい。本を手に取り、先程の続きから読み始める。本に氷河の話しが出てきて、そういえばさっき氷河の例えを出したのは、この本の影響だなと思う。1、2ページ読み、集中ができなくなってることに気づいたので、本を置いて、ぼーっとしつつ鍋の様子をじっと見ることにした。

5分くらい経つともう上澄みの水の質がトロッとした感じに変わっていたので、軽く混ぜてみる。25分と言いながら、時間を測っているわけではないので、外を眺めて、気分転換に混ぜ、ちょっと本を読んでみて、味見で硬さを確かめ、ぼーっとする、みたいなことを繰り返す。


途中で鶏がらスープの素と少しの熱湯を加えて、また煮込む。それぞれのお米の表面が少し剥がれてきて水とお米の境界が曖昧になってきたところで火を止めて、塩で味を整える。


ゆっくり過ごしていたら美味しいお粥が出来上がっていた、幸せなことだ。まだ明るいキッチンでやさしい夕食を食べるのは、幸せなことだ!

明日の朝は胃腸の調子が良いようにと切に願いながら、もくもくとお粥を食べた。


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